脆弱性診断の費用相場:見積もりの幅はどこから出るのか

PentaTrail編集部···8分で読める
目次

見積もりを2社から取ると、同じ「Webアプリケーション診断」という名前で30万円と300万円が並ぶことがあります。桁がひとつ違うのに、どちらも間違った見積もりではありません。

何を数えているかが違うだけなので、揃えれば比べられるようになります。

01 / 費用の帯は診断方式で決まり、しかも重なっている

ツール中心なら30〜100万円、専門家が手を動かす形なら100〜500万円以上が、国内の事業者が公開している目安です。帯が重なるので、金額だけを並べても、どの見積もりが何をする作業なのかは読み取れません。

診断方式別の費用の帯を3本並べた図。ツール中心が30〜100万円、ツールと手動の併用が80〜300万円、専門家による手動が100〜500万円以上で、3本の帯は横軸の上で互いに重なっている

図1:診断方式別の費用の帯(3本とも重なる範囲を持つ)

02 / 見積もりの幅は、4つの条件の違いから出る

何を診るか、何を単位に数えるか、どこまで深く見るか、診断のあとに何が付くか。会社ごとに違うのはこの4点で、金額をいちばん動かすのは「どこまで深く見るか」です

見積もりが4つの掛け算で決まることを示した図。何を診るか、何を単位に数えるか、どこまで深く見るか、診断のあとに何が付くかを掛け合わせて見積もりになり、どこまで深く見るかがいちばん効く

図2:4つは足し算ではなく掛け算で効く(1つ広げると全体が動く)

深掘り:4つがそれぞれ何を変えるか

何を診るか。 Webアプリケーションの作りを見るのか、OS やミドルウェアの設定と既知の欠陥を見るのか、スマートフォンアプリを見るのか、クラウドの権限設定を見るのかで、まったく別の作業になります。上の相場はWebアプリケーション診断のもので、対象の層が変われば別の見積もりが立ちます。

何を単位に数えるか。 画面数で数えるのか、リクエスト数で数えるのか、FQDN の数で数えるのかによって、同じシステムでも見積もりの母数が変わり、ログイン後の画面が多いサービスでは、ここだけで倍近く動きます。

診断のあとに何が付くか。 報告書を出して終わりなのか、質問に答えてくれるのか、修正後の再診断が含まれるのか。ツールの出力をそのまま渡す形と、人が偽陽性を落として再現手順まで付ける形とでも、人件費が変わります。再診断が別料金だと、直してから確かめるまでにもう一度予算が要ります。

03 / 深さを決めるのは、依頼側が用意するものと、範囲に含める確認項目

ログインしない範囲だけを見るのか、テスト用のアカウントを発行して認証後まで追うのか。依頼側が用意して渡すものと、範囲に含める確認の種類が増えるほど、人の手が要る作業になります。

深さを決める6つを2種類に分けた図。依頼側が用意・提供するものはアカウントと役割・許す操作の範囲・渡す内部情報で、範囲に含める確認は他人の権限に届くか・業務ごとの規則・複数手順の流れ。どちらも増えるほど人の手が要り、金額が上がる

図3:深さを決める6つは、依頼側が出すものと、範囲に含める確認に分かれる

深掘り:深さを決める6つの要素

どのアカウントと役割を用意するか。 一般の利用者と管理者、契約が別のテナント同士のように、いくつの役割を用意するかで作業量が変わります。多要素認証やシングルサインオンが絡むと、その準備自体にも手間がかかります。

他人の権限に手が届かないか。 他人の ID を指定して他人の情報が見えないか、一般の資格のまま管理者向けの機能に入れないか。この種類は仕様書が無くてもアカウントを2つ用意して見比べれば確かめられますが、役割の組み合わせの数だけ試すことになります。

その業務でしか決まらない規則を含めるか。 価格や数量を書き換えて注文が通ってしまう、手順を飛ばして確定まで進めてしまう。通信の形としては正常なリクエストで、その業務でそれが許されているかどうかでしか欠陥と判定できません。手動診断の費用が上がる理由のひとつがここにあります。

複数の手順にまたがる処理を追うか。 カートから決済、確定までのように、いくつものリクエストが状態を持って続く流れは、1本ずつ叩く形では踏めません。

どこまでの操作を許すか。 テスト用のデータを作ったり書き換えたりする操作は認証後の診断では普通に行いますが、取り消せない操作と、負荷をかけて可用性を試す種類は別に取り決めることが多く、本番で実施するのか同等の環境を用意するのかでも金額が動きます。

どこまで内部の情報を渡すか。 仕様書や設計、API の定義、ソースコードまで渡すほど、外から叩くだけでは届きにくい箇所に手が届きます。同時実行の競合や暗号の使い方などが、その典型です。

04 / 年1回の診断では、次の診断までの変化を確かめられない

年に1回の診断なら、実施した時点の状態を確かめたあと、次の診断までのおよそ1年が確かめていない期間になります。この間に、公開する資産が増え、新しい脆弱性が公表され、システム自体が変わります。

年1回の診断と次の診断を横軸の両端に置き、その間の約1年を確かめていない期間として示した図。期間の中で、公開する資産が増える、新しい脆弱性が公表される、システム自体が変わる、の3つが起きる

図4:診断と診断の間に起きること

診断が無駄という話ではありません。深く見るには人の手が要ります。ただ、深く見る作業と、間を空けずに見る作業は別の仕事で、片方をもう片方で代用できないというだけです。

深掘り:3つがそれぞれどう効くか

資産が増える。 部署ごとに立てたサブドメイン、検証用に公開したままのサーバー、統合した子会社のドメイン。前回の診断のときには存在しなかったので、報告書には載っていません。

脆弱性が増える。 コードを1行も変えなくても、使っているミドルウェアに新しい脆弱性が公表されれば、昨日まで問題として認識されていなかったサーバーが、今日から既知の攻撃対象になります。診断当日に「問題なし」だった構成が、3か月後に攻撃可能になっていることは珍しくありません。

システム自体が変わる。 機能を足す、設定を変える、権限の付け方を見直す、外部のサービスと繋ぐ。外から見て分かるのはその一部で、権限の境界や業務ごとの規則がどう変わったかは、外形からは判断できません。

05 / 継続監視は価格の出方も、確かめるものも違う

外部に公開されている資産を継続的に見つけて監視する形は月額で提供されていて、国内で価格を公開しているサービスはセルフサービス型が月額数万円から、運用支援が付くものは月額10万円を超えます。年額に直すと、中規模Webアプリの診断1回とは帯が別になります。

年1回の診断と継続監視を並べた図。年1回の診断は100〜250万円で認証後の画面・権限の境界・業務ごとの規則を確かめ、月額4〜7万円の継続監視は年額約50〜80万円で外から見える資産・構成の変化・脆弱性の候補を確かめる

図5:費用の帯だけでなく、その金額で確かめられるものが違う

比べるべきは金額そのものではなく、その金額で何が確かめられるのかのほうです。

深掘り:継続監視が届かない場所

「候補」と書いたのは、検出と実証が別の工程だからです。実際に攻撃が成立するかを確かめる工程は PentaTrail では CTEM 側の機能で、条件に合うものだけが対象になります。

外部観測型の継続監視は、ログインせず到達できる範囲を見ます。認証が要るパスは「ここは認証が要る」と記録して、その先には入りません。社内からしか到達できないシステム、ソースコードや使っているライブラリの一覧、社員の端末、ID 基盤やクラウドの管理画面も、別に連携を用意しない限り対象外です。どこで止まるかはASM・脆弱性診断・ペネトレーションテストの違いに図で書きました。

06 / 範囲が決まっていない見積もりは、後から膨らむ

金額を横に並べても比較にはならず、単位と深さと診断後のサポートを揃えて初めて、高い安いの話ができるようになります。外部に公開している資産の全体から診断範囲を決めるなら、外から見えているものの一覧が先に要ります。

見積もりを比べる前に揃える3つを並べた図。単位、深さ、診断後のサポートの3つを揃えて初めて金額の高い安いが比べられる。揃わないまま金額だけを並べると桁が違って見える

図6:揃えてからでないと、金額は比べられない

PentaTrail は ASM を月額40,000円、CTEM を月額68,000円で提供していて、金額も含まれる範囲も登録前に公開しています。14日間は無料で、自社のドメインを登録すると、外から見えている資産の一覧を確認できます。

付録:費用の目安の詳しい表

表1:診断方式別の費用の目安(国内事業者が公開している情報をもとにした市場の目安)

診断方式 費用の目安
ツール中心(自動スキャンが主体) 30〜100万円前後
ツールと手動の併用 80〜300万円前後
専門家による手動 100〜500万円以上

自分で無料のスキャナを回す形はこの表の外です。ここに並べたのは、事業者に依頼したときの金額になります。同じ方式でも幅があるのは、事業者が想定している対象規模が違うためです。

表2:対象規模別の費用の目安

対象の規模 費用の目安
小規模サイト(20〜30ページ程度) 30〜80万円前後
中規模Webアプリ(100〜300ページ程度・ログイン機能あり) 100〜250万円前後
大規模ECサイト・基幹システム連携あり 300万円以上

下の行はページ数ではなく機能の複雑さで決まるので、ページ数の帯とは重なります。ここまでが1回あたりの金額で、年に1回実施するなら、そのまま年間の費用になります。

表3:1回の診断と、継続監視で確認するもの

費用 主に確認するもの
中規模Webアプリの診断(年1回) 100〜250万円 認証後の画面、権限の境界、業務ごとの規則(範囲に含めた場合)
継続監視(月額4〜7万円の場合) 年額 約50〜80万円 外部から観測できる資産、構成の変化、脆弱性の候補

費用レンジは、2026年8月4日時点で国内の脆弱性診断事業者が公開していた価格情報をもとに整理しています。対象範囲や診断方式により、実際の見積もりは異なります。PentaTrail の金額は公式の提供価格です。

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