AIエージェントのセキュリティ対策:どこに構えるかで、守れるものが変わる

株式会社ペンタコン研究所 代表取締役 平舘一哉···7分で読める
目次

去る2026年7月22日〜24日に開催された、Gartner Risk Management Summit 2026 に参加してきました。

各社が標榜する「AIエージェントを守る」製品は、守っている場所が製品ごとに違います。ネットワークの経路に割り込む製品、端末に番人を置く製品、SaaS のテナントに API で入る製品、ログを後から読む製品、ID を配る製品、どれも間違ってはおらず、構えている場所が違うだけですが、ひとつひとつトポロジーや制御の仕組みを把握しないと選定でつまずくと思います。

01 / AIを守る製品は、守る対象を決めてから選ぶ

守る場所が違うだけで、どの製品も間違ってはいません。先に決めるのは製品ではなく、自社の AI が4つのどれなのかということです。

製品選びの道が二股に分かれる図。製品から入る道は、機能が似て見えて決め手が出ないまま止まる。対象から入る道は、守る対象を4つで決めると届く型が絞れて製品が決まる

図1:決める順序(製品から入ると決め手が出ない/対象から入ると製品が決まる)

02 / AIエージェントは、到達できなくても攻撃が通る

自社の業務に組み込んだ AIエージェントでは、外から到達できるかどうかだけでは、攻撃が成り立つかを判断できなくなります。

従来の攻撃とAIエージェントへの攻撃の道筋を並べた図。従来は攻撃者が開いた口を見つけて社内へ到達する。AIエージェントへの攻撃は、攻撃者が送ったメールをAIエージェントが読み、自社の権限で実行される

図2:攻撃の道筋の違い(開いた口を見つける/メールを1通送り、AIエージェントが読む)

通った指示を実行するのは自社の資格情報を持った AIエージェントで、被害の上限を決めるのは奪えた権限ではなく、あらかじめ与えた権限になります。

深掘り:守る側から見て、何が入れ替わるか

表1:守る側に残る違い

観点 従来の攻撃 AIエージェントへの攻撃
面の数え方 到達できるものを数えて減らす 読みに行く先が面になる
ログでの見え方 不審な通信や失敗したログイン 正規のツール呼び出しと変わらない
被害の上限 攻撃者が奪えた権限 あらかじめ与えた権限

読み取りしかできないなら情報が漏れる程度で済みますが、更新や送信ができれば実際に業務が動きます。

03 / 社内の AI は、守る対象が4つに分かれる

社内の AI は、従業員が使うものと自社が組み込むものに分かれ、それぞれがさらに2つに分かれます。4つのうち統制の入口を持たないのはシャドーAI だけで、そこだけは存在の把握から始まります。

社内の AI を4つに分けた図。従業員が使う AI が「会社が配った AI」と「シャドーAI」に、自社が組み込む AIエージェントが「クラウド/SaaS の上」と「自社アプリに組み込む」に分かれる

図3:守る対象の4分類(A 会社が配った AI/B シャドーAI/C クラウド/SaaS の上/D 自社アプリに組み込む)

深掘り:4つで何が違うのか

表2:対象ごとの統制の入口と記録

対象 統制の入口 記録
A 会社が配った AI 契約と設定 契約の範囲で決まる
B シャドーAI 無い 残らない
C クラウド/SaaS の上 提供元の管理画面と API 提供元に出る
D 自社アプリに組み込む 自分で書いた処理 作った側が用意しなければ無い

B だけが統制の入口を持ちません。稟議も設計も通らないまま業務に入っているので、会社が把握していない以上、まず存在を把握するところから始まります。

04 / AIを守る製品は、構える場所で10の型に分かれる

ブースで見た製品を、構えている場所で並べ直すと10の型になります。その場で止められるのは7つで、残る3つは数えたり試したりする型です。

製品が構える場所を外から内へ入れ子に並べた図。外側から通信の経路に①、端末に②、クラウドやSaaSの側に③⑥⑨、自社のアプリに⑦⑧、いちばん内側のモデルに⑩。層をまたぐものとして④ログと⑤ID基盤

図4:10の型が構える場所(通信の経路/端末/クラウド・SaaS の側/自社のアプリ/モデル)

深掘り:なぜ ID 基盤が自社アプリにも届くのか

自社で組み込んだ AIエージェントも、動くには鍵が要ります。接続情報を環境変数ではなく ID 基盤の金庫から取りに行く形にすれば、人ではない ID として台帳に載り、権限を消した時点で次の取得から止まります。

シャドーAI に手が届くのが①と②だけなのは、通信も端末も通らない貼り付けは誰にも見えないからです。型ごとの触り方と届く対象は記事の末尾にあります。

05 / 製品を入れる前に、4つの対象のリスクの順番を決める

製品を並べる前に決めるのは、どの対象にどれだけのリスクがあるかです。リスクの高い順番に取り組むことになるでしょう。

守る対象4つと、それぞれを自社で数えられる場所を結んだ図。会社が配ったAIは契約と利用者の一覧、シャドーAIは経費と請求とDNSのログ、クラウドやSaaSの上のAIエージェントはテナントの連携許可、自社アプリに組み込んだAIエージェントは権限と承認と記録

図5:4つの対象と、それぞれを数えられる場所の対応

契約と利用者、経費と請求、連携許可、権限と記録。どれも製品を入れる前に社内で数えられます。対象ごとに確かめることと、製品を入れる引き金は末尾の表にあります。

06 / 構えている場所は、製品名には書かれていない

製品名からも機能の一覧からも、その製品がどこに構えているのかは読み取れません。選定で確かめるのは3つだけです。どこに構えるか、どの対象に届くか、その場で止まるか。

製品に聞く3つのこと。どこに構えているか、どの対象に届くか、その場で止まるか

図6:3つの問いと、返ってくるはずの答えの並び

ブースで一社ずつ聞いて初めて分かったことなので、カタログを並べるところから入ると、同じところでつまずくと思います。この10の型は、2026年7月の展示会に出展していた63社のうち、AIエージェントや AIセキュリティを掲げるブースを回り、各社の担当者に製品の制御対象と仕組みを個別に確認して、ペンタコン研究所が整理したものです。

PentaTrail は、外から見える会社の攻撃面を継続的に洗い出して、優先順位づけと是正までを扱う CTEM / ASM サービスです。機能の一覧は 機能紹介 に、導入の相談は お問い合わせ にあります。実際の発見プロセスは 14日間無料で試せます

付録:型と対象の詳しい表

表3:10の型の触り方と、届く対象

# 構える場所とカテゴリ どう触るか 届く先
経路(関所)/ SWG・CASB 通信に割り込み、中身を見る A/B
端末とツールの扉(門番)/ EDR・ブラウザ拡張 送信や呼び出しの直前で捕まえる A/B
テナントの中(監査役)/ SaaS 側のポスチャ管理 別の会社の製品が、SaaS のテナントに API で入って設定と権限と履歴を読む A/C
ログ(録画)/ SIEM・UEBA 取り込んで事後に異常を見つける A/C/D
ID 基盤(受付)/ IDaaS・IGA・PAM 誰が何に入れるかを決め、権限を棚卸しし、資格情報を仲介する A/C/D
プラットフォーム自身(大家)/ クラウド事業者の内蔵機能 クラウドや SaaS の提供元が、自社の製品に ID・データ保護・検知を内蔵する A/C
アプリの中(建材)/ ガードレール SDK アプリの処理の中にライブラリとして入り、外に出ない呼び出しも見る D
任意のゲートウェイ(自主の関所)/ AI ゲートウェイ 開発者が自分で立てた通り道に、AI への呼び出しを通す D
クラウド全体(衛星写真)/ CNAPP・AI-SPM クラウドのアカウントを走査して、AI の資産と過剰な権限を棚卸しする D
モデルとテスト(警護と侵入テスト)/ レッドチーム・モデル検査 攻撃して弱点を探す C/D

表4:4つの対象のリスクと、自社で確かめられること

対象 主なリスク 自社で確かめること 製品導入のトリガ
A 会社が配った AI 業務データが外部のサービスへ渡る 契約している AI と利用者、入れているデータの機微度 機微なデータを入れる部署があるのに、入力の検査が一切ない
B シャドーAI 会社が知らないまま社内データが外部へ出て、出た事実も残らない 経費と請求から拾える個人契約、既存のプロキシや DNS のログ どれだけあるか分からない。見えない範囲の大きさが分からないこと自体
C クラウド/SaaS の上で動く AIエージェント 連携許可が広すぎるまま残り、利用者が承認なしに増やせる テナントの連携許可の一覧。誰が、どのスコープで、全社許可か個人許可か 連携が手作業で追えない数になっている
D 自社アプリに組み込む AIエージェント 更新や送信ができる AIエージェントが、読ませた文書で動かされる 権限の一覧、承認の有無、記録の有無 書き込み権限があるのに、承認も記録もない

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